「布団に入っても体の力が抜けない」「眠ろうとすると心臓の音が気になる」「自律神経が乱れているのかもしれない」。
眠れない夜に体まで落ち着かないと、不安になりますよね。
インターネットで調べると「交感神経が優位だから眠れない」「副交感神経へ切り替えれば眠れる」と説明されることがあります。
自律神経と睡眠が関係しているのは確かです。けれど、体感だけで自律神経の状態を判断したり、眠れない原因をすべて「自律神経の乱れ」にまとめたりすることはできません。
この記事では、自律神経と睡眠の関係をできるだけわかりやすく整理しながら、寝る前に避けたいこと、今夜できる落ち着き方、受診を考えたほうがよい症状を紹介します。
※本記事は一般的な情報であり、診断や治療に代わるものではありません。胸の痛みや急な呼吸困難などがある場合は、睡眠の問題として様子を見ず、すぐに医療機関へ相談してください。
自律神経と睡眠の関係
自律神経は、心拍、血圧、呼吸、体温、消化などを、意識しなくても調整している神経の仕組みです。
よく、交感神経は「アクセル」、副交感神経は「ブレーキ」にたとえられます。ただし、眠る時に交感神経が完全に止まり、副交感神経だけになるわけではありません。
健康な8人を対象に、睡眠中の交感神経活動を直接測った研究では、深いノンレム睡眠へ進むにつれて交感神経活動、血圧、心拍数が低下しました。一方、夢を見やすいREM睡眠では交感神経活動が増え、血圧と心拍数も起きている時に近い水準へ戻りました。1
つまり、正常な睡眠中でも自律神経は一晩中変化しています。「夜中に一度心拍が上がった」「寝ている間のHRVが低かった」という一つの数字だけで、異常とは判断できません。
不眠では、脳や体の覚醒が夜になっても下がりにくい「過覚醒」という考え方があります。心拍や心拍変動(HRV)を調べた研究もありますが、結果は一様ではありません。
34件の研究をまとめたレビューでは、多くの観察研究で不眠のある人とない人の心血管系の活動に違いが見つかりました。ただし、どの指標がどう変わるかは、不眠のタイプによってばらついていました。2
さらに、17研究・921人をまとめたメタ解析では、不眠のある人でHRVが一貫して低下しているとは確認できませんでした。3
一方、慢性不眠のある180人を調べた研究では、検査で実際の睡眠時間が短かったグループに、睡眠中の副交感神経活動の低下が見られました。本人が記録した睡眠時間で分けた場合には、同じ違いは見つかりませんでした。4
このように、自律神経と不眠には関係がありますが、とても複雑です。
「自律神経が乱れたから眠れない」と自分で原因を決めるより、今起きていることを一つずつ見たほうが、安全で対処もしやすくなります。
「交感神経が高ぶっている」と感じる夜に起きやすいこと
夜に覚醒が強いと、次のようなことが気になりやすくなります。
- 心臓の音や脈がいつもより大きく感じる
- 呼吸が浅い、うまく息を吸えない気がする
- 肩、あご、手、おなかに力が入る
- 暑さ、汗、手足の冷えが気になる
- 胃が重い、トイレへ行きたくなる
- 考え事が次々に浮かぶ
- 「早く落ち着かなきゃ」と体の状態を何度も確認する
こうした感覚は、緊張や不安、カフェイン、寝室の暑さなどでも起こります。動悸や息苦しさには、心臓、呼吸器、甲状腺、薬の影響など別の原因が隠れていることもあります。
症状があるだけで「交感神経が高い」とは断定できません。
スマートウォッチのHRVも同じです。市販の6機種と心電図を比較した研究では、HRVの測定方法や一致度は機種によって異なりました。また、この研究は健康な成人53人を一晩測ったもので、睡眠障害のある人での精度は確認されていません。5
数値は日々の傾向を見る参考にはなりますが、一晩のHRVだけで自律神経失調症や不眠症を判断することはできません。
寝る前に避けたい習慣
体が落ち着かない夜は、「副交感神経を上げる特別な方法」を探す前に、覚醒を増やしやすいものを減らしてみましょう。
夕方以降にカフェインを多くとる
コーヒー、エナジードリンク、濃いお茶などに含まれるカフェインは、眠気を弱めます。
健康な成人12人を対象にした研究では、400mgのカフェインを就寝直前、3時間前、6時間前に摂った場合、いずれもプラセボと比べて睡眠が乱れました。6
400mgは多めの量で、カフェインへの反応には個人差があります。それでも、夜に体が落ち着かない人は、夕方以降の量や時間を見直す目安になります。
明るい画面を長く見る
発光する電子書籍端末と紙の本を比較した実験では、夜に発光画面で読書した時のほうが、寝つくまでの時間が長くなり、メラトニンの分泌や体内時計にも変化が見られました。7
スマホでは光だけでなく、仕事の連絡、ニュース、SNSなど新しい情報も次々に入ってきます。
寝る直前は画面を暗くするだけでなく、通知を切り、見る内容を増やさないことも大切です。
心拍数や時計を何度も確認する
「まだ心拍が高い」「HRVが昨日より低い」「あと何時間しか眠れない」と確認を続けると、眠ることが新しい課題になります。
異常を探し続けるより、今夜は時計と数値を見えない状態にして、体を休ませることへ注意を戻します。
無理に深呼吸し続ける
たくさん吸おうと頑張ると、息苦しさやめまいが増えることがあります。
呼吸法は、深く吸うことを競うものではありません。苦しくなる、しびれる、めまいがする場合は中止し、普段の呼吸へ戻してください。
夜にできる落ち着き方
今夜は、次の方法を一つか二つだけ試してみてください。
全部を完璧に行う必要はありません。「眠らせる」のではなく、覚醒を増やす刺激を少しずつ減らすイメージです。
目に入る光と情報を減らす
部屋の照明を少し暗くし、仕事の通知を切ります。
スマホを使う必要がある場合は、画面の明るさを下げ、調べものやSNSを広げないようにします。眠れたか確認するために時計を見るのも、いったんやめてみましょう。
吐く息を少し長くする
楽な姿勢になり、無理のない量だけ息を吸います。そのあと、吸った時より少しゆっくり吐きます。
秒数を正確に数える必要はありません。1〜2分ほど、苦しくならない速さで続けるだけでも十分です。
ゆっくりした呼吸に関する223研究のメタ解析では、呼吸中や呼吸後に、副交感神経の働きと関係するHRV指標が増える傾向が示されました。8
ただし、HRVが変わることと、不眠が治ることは同じではありません。
不眠症状のある女性16人を対象にした小さな実験では、呼吸に合わせた映像と音のフィードバックにより、寝る前の心拍数が約5回/分下がり、途中で目覚める回数も減りました。一方、寝つくまでの時間は短くなりませんでした。9
呼吸法は「必ず眠れる方法」ではなく、体の緊張から注意を離すために使ってください。
体の力を一か所ずつゆるめる
まず、あごをかみしめていないか確認します。次に、肩、手、おなか、足の順番で、力が入っていたら少しだけゆるめます。
全身を一度にリラックスさせようとしなくて大丈夫です。
米国睡眠医学会のガイドラインでも、リラクセーション療法は慢性不眠に対する選択肢のひとつとして提案されています。12
長く目が冴えたら、いったん布団を出る
布団の中で焦りが強くなってきたら、いったん寝床を離れます。
暗めで安全な場所で静かに過ごし、眠気が戻ってきたら布団へ戻ります。これは、不眠の認知行動療法(CBT-I)に含まれる刺激コントロールという方法です。12
転倒しやすい方や、医師から夜間の行動について指示を受けている方は、その指示を優先してください。
考え事が続く時は「脳の切り替え」も大事
体をゆるめようとしても、明日の予定や今日の失敗が次々に浮かんでくる夜もありますよね。
寝る前の認知活動を調べたレビューでは、心配や反すうなどの考え事が、寝つくまでの時間や不眠と関係することが整理されています。10
この場合は、体だけでなく、考え事の流れからも少し離れる必要があります。
まず、気になっていることを紙に一行だけ書きます。
気になること:明日の会議の準備が終わっていない
明日の一歩:始業後に資料の見出しを3つ作る
書いたら、メモを閉じます。今夜解決するのではなく、明日の自分が再開できる状態にしておきます。
それでも考え事へ戻ってしまう時は、認知シャッフル睡眠法を試す方法もあります。
「りんご」「雲」「コップ」「きりん」のように、意味のつながらない単語を順番に短くイメージします。仕事や不安のストーリーから、関係のないイメージへ注意を移す方法です。11
ただし、認知シャッフルそのものの研究はまだ多くありません。必ず眠れる方法ではなく、考え事から少し離れるための選択肢として使ってください。
詳しいやり方は、認知シャッフル睡眠法のやり方で紹介しています。
受診を考えたほうがいいケース
「自律神経のせいだろう」と思っていた症状に、別の病気が隠れていることもあります。
次のような症状がある場合は、睡眠法や呼吸法だけで様子を見ないでください。
- 動悸や息苦しさを繰り返す
- 脈が明らかに不規則に感じる
- めまい、ふらつき、失神がある
- いびきが強い、睡眠中の呼吸停止を指摘された
- 脚の不快感でじっとしていられない
- 眠れない状態が続き、日中の生活に支障がある
- 強い不安や気分の落ち込みが続く
不調が続く場合は、かかりつけ医や睡眠を扱う医療機関へ相談してください。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、睡眠の不調や休養感の低下が続く場合は、医師へ相談することが勧められています。13
急な息切れや呼吸困難、胸の中央が締め付けられるような痛みが2〜3分続く、突然の激しい胸や背中の痛みなどは、厚生労働省が「迷わず119へ」としている症状です。14
こうした症状がある時は、「自律神経を整えれば治るかもしれない」と待たず、すぐに救急車を呼んでください。
Nemuriftでできること
Nemuriftは、自律神経を測定したり治療したりするアプリではありません。
考え事が止まらない夜に、認知シャッフル睡眠法を音声で行いやすくする入眠サポートアプリです。
自分で認知シャッフルをすると、「次は何の単語にしよう」と考えること自体が作業になる場合があります。
Nemuriftでは、関連の薄い単語が一定の間隔で自動再生されます。聞こえたものを短くイメージするだけなので、自分で単語を探す必要がありません。
- 認知シャッフルに使いやすい720単語を収録
- 単語の読み上げ間隔を8〜15秒で調整
- 環境音を単語音声と一緒に再生
- 就寝時刻の通知と最大8時間のタイマーに対応
体の緊張が気になる夜は、まず照明と通知を減らし、苦しくない範囲でゆっくり息を吐きます。そのあと、まだ考え事が続くようなら、Nemuriftを小さな音量で流す使い方がおすすめです。
自律神経の数値を良くしようと頑張るのではなく、眠る前の刺激と考え事を少しずつ減らすために使います。
Nemuriftは医療行為や睡眠薬の代わりを目的としたものではありません。動悸や息苦しさがある場合や、不眠が長く続く場合は、医療機関への相談を優先してください。
よくある質問
Q1. 眠れないのは交感神経が優位だからですか?
不眠のある人に、夜の心拍や自律神経活動の違いが見つかった研究はあります。ただし、結果は不眠のタイプや測定方法によって異なります。2, 3
眠れないという感覚だけで、交感神経が優位だとは判断できません。
Q2. HRVが低い日は眠れないのでしょうか?
一晩のHRVだけで、その日の睡眠や健康状態は決められません。
HRVは、呼吸、姿勢、体調、飲酒、測定時間などの影響を受けます。ウェアラブル機器も、機種によって測定方法や心電図との一致度が異なります。5
数値が気になって眠れないなら、夜は結果を見ず、後日まとまった傾向として確認するほうがよいでしょう。
Q3. 4-7-8呼吸法のように、秒数を決めたほうがいいですか?
決まった秒数に合わせる必要はありません。
息を止めるのが苦しい人や、長く吐こうとして息苦しくなる人もいます。まずは普段どおりに吸い、吐く息だけを少しゆっくりにしてみてください。
苦しさ、めまい、しびれが出たら中止します。
Q4. 副交感神経を高める音や周波数はありますか?
特定の音や周波数を流せば、誰でも副交感神経が高まり眠れる、と言い切れる根拠はありません。
環境音を使う場合は、自律神経へ直接効かせるというより、周囲の突発的な物音を目立ちにくくし、自分が落ち着ける環境を作るために使うのがよいでしょう。
Q5. 動悸がしても、呼吸法で様子を見ていいですか?
繰り返す動悸や、不規則な脈、めまい、失神がある場合は医療機関へ相談してください。
急な呼吸困難や、締め付けられるような胸痛が続く場合は、呼吸法で様子を見ず119番へ連絡してください。14
Q6. どれくらい眠れなかったら受診すべきですか?
日数だけで判断する必要はありません。
眠れないことで日中の生活に支障が出る、強い眠気がある、気分の落ち込みや不安が続く、いびきや呼吸停止を指摘された場合は、早めに相談してください。13
参考文献・引用リンク
- [1] Somers VK, Dyken ME, Mark AL, Abboud FM. Sympathetic-nerve activity during sleep in normal subjects. New England Journal of Medicine. 1993;328(5):303–307. DOI
- [2] Nano MM, Fonseca P, Vullings R, Aarts RM. Measures of cardiovascular autonomic activity in insomnia disorder: A systematic review. PLOS ONE. 2017;12(10):e0186716. DOI
- [3] Zhao W, Jiang B. Heart rate variability in patients with insomnia disorder: a systematic review and meta-analysis. Sleep and Breathing. 2023;27(4):1309–1313. DOI
- [4] Jarrin DC, Ivers H, Lamy M, Chen IY, Harvey AG, Morin CM. Cardiovascular autonomic dysfunction in insomnia patients with objective short sleep duration. Journal of Sleep Research. 2018;27(3):e12663. DOI
- [5] Miller DJ, Sargent C, Roach GD. A Validation of Six Wearable Devices for Estimating Sleep, Heart Rate and Heart Rate Variability in Healthy Adults. Sensors. 2022;22(16):6317. DOI
- [6] Drake C, Roehrs T, Shambroom J, Roth T. Caffeine Effects on Sleep Taken 0, 3, or 6 Hours before Going to Bed. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2013;9(11):1195–1200. DOI
- [7] Chang AM, Aeschbach D, Duffy JF, Czeisler CA. Evening use of light-emitting eReaders negatively affects sleep, circadian timing, and next-morning alertness. Proceedings of the National Academy of Sciences. 2015;112(4):1232–1237. DOI
- [8] Laborde S, Allen MS, Borges U, et al. Effects of voluntary slow breathing on heart rate and heart rate variability: A systematic review and a meta-analysis. Neuroscience & Biobehavioral Reviews. 2022;138:104711. DOI
- [9] de Zambotti M, Sizintsev M, Claudatos S, et al. Reducing bedtime physiological arousal levels using immersive audio-visual respiratory bio-feedback: a pilot study in women with insomnia symptoms. Journal of Behavioral Medicine. 2019;42(5):973–983. DOI
- [10] Lemyre A, Belzile F, Landry M, Bastien CH, Beaudoin LP. Pre-sleep cognitive activity in adults: A systematic review. Sleep Medicine Reviews. 2020;50:101253. DOI
- [11] Beaudoin LP. A design-based approach to sleep-onset and insomnia: Super-somnolent mentation, the cognitive shuffle and serial diverse imagining. 2014. PDF
- [12] Edinger JD, Arnedt JT, Bertisch SM, et al. Behavioral and psychological treatments for chronic insomnia disorder in adults: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2021;17(2):255–262. DOI
- [13] 厚生労働省. 健康づくりのための睡眠ガイド2023. 睡眠対策
- [14] 厚生労働省. こんな時は迷わず119へ. 上手な医療のかかり方.jp
